目的と――タイミング! 最終日の今日は、最後にもう一度、前回とは違う高校生との練習ゲームが組まれた。ウォーミングアップでは、シュートが決まるたびに「ナイスシュート!」とか、きちんとしたミートができると「ナイスステップ!」といった声が、チーム全体から聞こえるようになった。でもそこで手綱を緩めないのが鷲野流。選手が少しでも軽くやっていたら「何気なくやっちゃダメだよ」とピシャリ。そして「目的と?」と聞くと、選手たちはすかさず「タイミング!」と答える。目的を達成させるためにはお互いのタイミングが必要という、U-15トップエンデバーが掲げるチームプレイの鉄則が浸透してきたようだ。その後も試合のギリギリまで、やってきたことを細かくチェックしながら、試合に臨んだ。 まさに練習の成果が試合で出た! この日の試合は、8分×6本。試合終了後に相手チームのコーチが言っていたとおり、相手は「背も小さいし、選抜チームに選ばれるような選手のいない」チーム。175センチ以上の選手7人いるU-15トップエンデバーにとっては、個々の力でも勝負ができそうだが、この合宿でやってきた「For the TEAM」の精神で、チーム全体で相手と戦っていた。そのなかで、やり続けてきたディフェンスの裏を突くプレイや、視野のないところからスティールをして、そこからファストブレイクにつなげるなど、チームとしての好プレイがいくつも飛び出していた。鷲野コーチも「すごいよね。やったことがちゃんと試合で出せているからね。ホント、子どもの力は無限大ですよ」と、試合の合間に満面の笑みを見せていた。個々の高い能力に、チームプレイが加わると、ここまで相乗効果が得られるのかと驚かされる練習ゲームだった。 ゲームの中で対応いていく力を磨く。 とはいえ、簡単に引き下がらないのが高校生の先輩たち。U-15トップエンデバーがいまだ手をつけていないチームディフェンスの部分を、ドリブルスクリーンなどを使って攻めてくる。だが、それもゲーム間に鷲野コーチから「ガード同士ならスイッチアップ」「センターが絡んでくるなら、ディフェンスのコースを開けてあげよう」というアドバイスで、後半は対応してしまう。すると、今度は高校生がゾーンディフェンスを引いてきた。これにはなかなか対応しきれなかったが、「これが最後のゲームだよ。ベンチはもう何も言わないから、自分たちだけでやってみよう。チームとしての共通理解はもうできているはずだよ」という鷲野コーチの言葉が効いたのか、最終戦はゾーンを打ち破って、勝利でこの合宿を終えた。 大人の階段を一歩昇った4日間! すべての練習日程が終わり、11:55からは閉講式。そこでは、初日に視察に来られた全国中学生バスケットボール連盟の小倉恭志理事長から「初日は、この選手たちで4日間大丈夫なのかなって思ったのですが、今日見て、4日間でこうも変わるものなのかと感心しています。でもここが終わりではありません。この経験をぜひ次のステップにつなげて、これからも頑張ってほしい」とエールが贈られた。その後、福田精スーパーバイザー、鷲野鋭久コーチをはじめとする4人のコーチからも言葉を贈られた選手たち。最後にキャプテンの高橋左稚選手がお礼の言葉を述べ、全員で深々と頭を下げた。たったの4日間ではあったが、また一歩、彼女たちは大人になった4日間でもあった。 福田精スーパーバイザーのコメント 今回は、来年行われる「U-16FIBAアジア選手権」も考慮して、2年生を例年よりも多く入れました。その部分の心配はありましたが、始まってみたところ、選手の素晴らしさが確認できて、順調に成長してくれたと思います。私は常に下の年代と上の年代とを結ぶ継続的な指導、つまり一貫指導を念頭においていて、その年度の中で素晴らしい選手を発掘するようにしています。そういった意味でも、今年度もいい成果を上げたと感じています。また昔に比べたら、いいバスケットが増えてきているように感じます。それもエンデバープロジェクトのよさが全国に伝わっているからだと思いました。
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