1時間みっちり、ファストブレイク! 3日目は全日本総合選手権の準々決勝を観戦するため8時から練習が開始された。基本の2対1で軽く汗を流すと、ファストブレイクの基本形の確認練習。「このチームは選抜チーム。今は短時間でのルール作りをしているんだ。みんなも意識を高く持って練習に取り組もう」と鷲野コーチ。いろんなチームの形がある中で、U-15の形を覚えていくのは簡単ではないが、細かく練習を止めて、その都度説明していく。はじめは「1人の注意はみんなの注意だそ」と言われるくらい、同じミスをみんなで繰り返していたが、徐々に頭の中が整理されてきて、最後はコーチのイメージに近いファストブレイクを出すようになっていた。 代々木第二体育館で生観戦! 9:30、国立スポーツ科学センターを出発して、本蓮沼〜巣鴨〜原宿と経由して、国立代々木競技場第二体育館へ向かったU-15女子トップエンデバーの選手たち。15人のメンバーのうち2人は初めて生のWJBLチームの試合を見るという。その第1試合の【トヨタ自動車vs日本航空】、第2試合の【デンソーvsJOMO】の試合は、彼女たちにとって、とてもいい教材となった。特にトヨタのPG・三浦選手は160センチと小柄ながら、状況を「観て」からのアシストパス、コートにころがったボールに飛び込むルーズボール、そして相手の視野のないところからのスティールなど、U-15が今まさにやろうとしていることを、大舞台で実践していた。フォワードとセンターのバックドアプレイや、センター同士のハイ・ロープレイなども見ることができて、U-15の選手たちもいいイメージが持てたはずだ。 全日本総合選手権を観戦後の代表コメント。 「初めてJOMOの試合見たんですけど、自分はPGなのでJOMOの大神雄子選手のプレイに見入ってました。そしたら、試合全体も楽しくて、雰囲気もよかったし、観客も盛り上がっていて、いいなって思いました。PGとしては、大神選手を見ていて、試合中でも声をかける大事さがわかりました」と高橋左稚キャプテンがいうと、チームのムードメーカー、2年生のヒル理奈選手は「今日の試合を見て、大事なのはリバウンドやルーズなんだなってわかりました。自分も代々木第二体育館のあのコートや、もっと上のレベルのコートに立ってプレイしたいなって思いました」とコメント。そして最後に「これはカットしてくださいね」と言いながら、先輩たちに促され「ウェ〜イ」と小島よしおのモノマネをしたヒル選手。まだまだ元気はあるようだ。 向かう先が見えてくると笑顔もこぼれる。 代々木第二体育館から帰ってくると、ほとんど休むことなく、すぐに午後の練習が始まった。まずはハーフコートオフェンスのエントリー方法。昨日までの動きを確認すると、さらにいくつかのバリエーションが告げられる。細かい部分はまだまだだが、教えれば教えた分だけ吸収していく選手たちに、鷲野コーチも冗談交じりに「あまり他の中学校の子に教えたくないんだよね〜(笑)」といいながら、「これができたら、めちゃめちゃバスケットがおもしろくなるぞ!」と、どんどん新しいバリエーションを教えていた。以前、鷲野コーチが言っていた「中学生には無限の可能性がある」という言葉も、コーチングスタッフからの指導やアドバイスによって新しい発見ができてこそ。選手たちの笑顔も、何かが見え始めた表れなのかもしれない。 1つが見えてくると、1つ忘れてしまうものがある… とはいえ、一朝一夕に身に染み付くようなものではないのも事実。続いて行われたオールコートの3対3では、選手個々の能力、15人に選ばれた理由とポテンシャルをはっきりと見せつけるものになったが、1回目の休憩時間に鷲野コーチから、「五十嵐コーチや鈴木コーチから何度も同じことを言われるな! それと誰もディフェンスをしてないぞ!」と一喝されてしまった。U-15のやろうとしていることが見えてきた嬉しさと、スペースの多いオールコートの3対3だけに自由に動けることがあいまって、ディフェンスに注意が向いていなかったのだ。だが、鷲野コーチの一喝が効いて、2本目、3本目はディフェンスとオフェンスが「盾」と「矛」になった、緊張感のある3対3になって、この日の練習を終えた。 五十嵐克之コーチのコメント 15人に選ばれたということで、それぞれの個性をしっかり発揮できている選手もいるんですけど、一方で自分の中学校でやってきたポジションとは違うポジションもしなくてはいけないということもあって、そこに戸惑いを感じて「何をしていいのかわからないんだ」って悩んでいる選手もいます。でも今日の3対3のラリーを見ると、やはり能力的にはすばらしいものを持っているので、今までやってきたバスケットで納まらないで、いろんなバスケットを経験して、器を広げてもらいたいなって思っています。鷲野コーチのバスケットは、中学生を型にはめるんじゃなくて、みんなが何でもできることを狙いにしています。そのなかで私は、「アナタのいい部分はこういうところだよ。でもまだまだこういうところが足りないから、それができるようになれば、もっとバスケットが楽しくなるよ」と声をかけるようにしています。できないことをできるようにするのが練習なんだけど、この短期間の中で克服するのは難しいと思います。だから明日の練習試合でも、「自分のいいところをアピールしてこい!」とベンチから送り出してあげれば、選手たちも吹っ切っていいプレイをしてくれるんじゃないか。そういう声かけをしていきたいと思っています。
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